フードデリバリーの新規ブランド開発。開発のリアルな裏側教えます

ブログでもたまに触れていますが、僕は全国フードデリバリー協会の代表理事を務める傍ら、ステーキやハンバーグをはじめ、カレー・ロカボフード・串カツなど、複数のデリバリー専門ブランドを運営しています。

そしてこのたび、10/2に生姜焼きとチキンカツの専門店『豚野郎&チキン野郎』という新たなブランドをオープンさせました。

ワンランク上の豚の生姜焼きとチキンカツがデリバリーで味わえるありそうでなかったお店です。


これまでもデリバリーをオープンするにあたって押さえておきたい基本情報などをご紹介してきましたが、新しくお店を立ち上げるにあたりどんなところに重点を置くべきなのか、今回オープンしたブランドを例にご紹介していきたいと思います。

①業態設定

当たり前なようで意外と見落としがちなのが、そもそも“何屋”としてスタートするかという事です。
もちろん自分が作りたい料理・得意な料理というのが大前提ではありますが、例えばカレーとかラーメンなどの人気業態は競争が激しく、他店と差別化できる何かが無いと長く生き残っていくのは難しいでしょう。
とはいえ、ファミレスのように色んな料理を揃えても逆にお店のウリが伝わりづらいので、たくさんあるデリバリー店の中で選んでもらうのは至難の業です。

そこで僕は、1つの料理に的を絞り他店では味わえない独創性や専門性を高めた業態で勝負することをおすすめします。

また業態を決めるにあたっては、今のトレンドを押さえることも重要です。
ちなみにここで言うトレンドは、タピオカのような一過性の“ブーム”ではなく、食のニーズや傾向を意味します。
例えば昔は女性=ヘルシーだったのが今では女性でもガッツリ濃い味を求めているとか、男性もこってりとしたボリュームのあるものばかりでなく、メタボを気にしてあっさりした和食も好まれていることなども、今の食のニーズ=トレンドと言えるでしょう。

そのことも踏まえた上で、今回僕が新業態として選んだのは「生姜焼き」「チキンカツ」です。

まず生姜焼きについては、数年前から専門店が登場するなどジワジワ人気が高まっていますし、たっぷりの生姜と野菜が摂れるので、現在の健康志向にもマッチしています。
そこで普通の生姜焼きよりも豚を厚くカットし、それをライスの上に乗せるなど提供方法に一ひねり加えることで、他店との差別化を図るとともによりボリューム感・シズル感を訴求することにしました。

チキンカツは洋食の王道ともいえるメニューですが、トンカツに比べ専門店が少ないので他店と競合になりにくいですし、家庭で料理する場合フライものは敬遠されがちなので、専門店が作る美味しいチキンカツが手軽に味わえるお店があればお客様のニーズに合致し、十分勝算はあると読みました。

「専門性」と「ニーズ」、そしてあと一つ生姜焼きとチキンカツにしようと決めた大きな理由があります。
それは「食材の有効活用」です。

そもそも今回新たにブランドを立ち上げようと思ったきっかけは既存業態で使っている豚肉や鶏肉を使って何か出来ないかと考えたのが始まりでした。
デリバリーの利点の1つに、1店舗で複数の業態を展開出来る事が挙げられますが、だからと言って業態ごとに別々の食材を揃えていては仕入れの手間もコストもかかります。
さらに食材が余れば廃棄しなければならず、折角のメリットを活かすことが出来ません。
ですが複数の業態で食材を使いまわすことが出来れば仕入れの手間やコスト、更に食材ロスも抑えることが出来るので効率よく店舗運営する事が可能となります。

ですので、現在デリバリーのお店を運営しており新しく業態を立ち上げようと検討されている場合は、既存店の食材を使いまわせるかという点も頭に置いて業態開発をすると良いでしょう。

②価格設定

業態を決めたら次に価格帯を設定する必要があります。しかし、価格設定と言っても単に原価から何%利益を乗せたら良いという単純なものではありません。
商品の価格帯をいくらに設定するかによってお客様の層が大きく異なるので、お店の方向性を示す上でも価格は重要なファクターと言えます。

僕が今まで展開してきた業態はだいたい1,500円前後の比較的高単価な商品を中心に展開してきました。
食材の質や調理の手間・味のクオリティからすると1,500円でも十分お得なのですが、とはいえ若い人だと1回の食事に1,500円を出すのは中々勇気がいりますよね。
実際既存店の客層は本物志向のビジネスマンや美意識の高い女性など、比較的お金に余裕のある30代以上の人が中心でした。

そこで新ブランドでは、今まで取り切れなかった新たな顧客の開拓を狙い、平均単価を1,000円に設定しました。
先にターゲット層やそれに合わせた価格を設定しておくことで、その後のレシピ開発もしやすくなるので、ぜひ価格設定は先に決めておくようにしましょう。

③ネーミング設定

売れる業態を作るには、料理の美味しさや価格の値ごろ感も大事ですが、ネーミングもかなり重要です。
今回数ある候補の中で最終的に決めたのは『豚野郎&チキン野郎』でした。
ネーミングに合わせブランドビジュアルも作成しました。

豚野郎&チキン野郎のブランドビジュアル。


ご覧の通りかなり攻めたネーミング&ビジュアルですが、中々インパクトあるでしょ(笑)
中途半端にカッコつけたり名前に意味を持たせようとするよりも、これくらいわかりやすい方が良い場合もあります。

デリバリーの場合、最近はウーバーイーツや出前館などのデリバリーサイトから注文されることも多いのですが、何十・何百ものお店の名前がズラッと並ぶ中で選んでもらうためには、パッと見のインパクトが必要になります。
いくら美味しくてお値打ちな商品であっても、ユーザーの目に留まらなければ注文すらしてもらえません。だからこそネーミングはとても重要なのです。

ポイントはインパクトがあって覚えやすい、かつどんなお店かイメージしやすいもの。このポイントさえ押さえられていれば、ちょっとくらい攻めたネーミングでも僕は良いと思っています。

④写真撮影

お店のコンセプトが決まり、ある程度レシピも完成したら次にしなければいけない事、それは写真撮影です。

レストランの場合はお客様に直接料理のこだわりやポイントを説明できますが、デリバリーではチラシやデリバリーサイトの情報が全てです。
レストランに比べ料理を選ぶための判断材料が少ない分、デリバリーの方がぱっと見の美味しそうな見た目で料理を選ぶ傾向が強いので、料理写真次第でその商品の売れ行きが決まると言っても過言ではありません。
中には写真を変えただけで商品の出数が倍近く増えたという事例もあります。
それくらい写真は重要なのですが、実際のところプロのカメラマンに撮ってもらう人は意外に少なかったりします。

その理由のほとんどが「お金がない」という事ですが、お金が無くても厨房機器は誰でも必ず揃えますよね。
僕は、厨房機器と同じくらい料理写真はデリバリーにとって必要な経費だと思っています。
ですので、撮影費は必ず発生するものと考え計画段階から予算に組み込んでおくようにしましょう。
ちなみに撮影にかかる費用ですが、カメラマンによって金額はピンキリなので一概には言えませんが、だいたい20,000円~が相場かと思います。またフリーランスで活動しているカメラマンであればある程度金額の相談に応じてもらえたりもしますので、必要に応じて問い合わせてみると良いでしょう。

光の当て方や構図など、やはりプロが撮る写真はクオリティが違います。


僕も料理撮影には毎回かなりの時間とコストをかけています。
今回は盛り付け方に特にこだわりました。豚の生姜焼きはいかに従来の固定概念にとらわれないごちそう感を出せるかどうか、チキンカツは家庭では真似できないパン粉の立ち具合や断面のしっとり感を表現できるかなどを、何度もカメラマンと相談しながら撮影しました。

料理写真は“お店の顔”とも言うべきツールです。ついつい後回しになりがちですが、ぜひ写真撮影には力を入れて頂きたいと思います。

写真を見た瞬間に「美味しそう」と思えるかどうかで、商品の売れ行きが大きく変わります。

まとめ

今回新店の立ち上げや業界開発するにあたって見落とされがちなポイントについて詳しくご紹介しました。
美味しい料理を安く提供出来るに越したことはありませんが、それだけで売れるかというとそうとも言い切れないのがデリバリーの難しいところであり面白いところでもあります。
今回ご紹介した内容以外にも、どんな立地で出店するのが良いのかとか、チラシはどのくらい作るのがベストなのかなど、出店に向けてやるべきことはまだまだあります。

全国フードデリバリー協会では、今回書ききれなかった出店に関するご相談に常時対応しております。
「デリバリーで出店してみたい。でも何から手をつけて良いかわからない」とお悩みでしたら、お気軽にお問合せいただければと思います。

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